社内恋愛なんて
「……心から信用できなくてもいいんですか?」


 信用できないのに付き合うなんて、相手に失礼ではないのか。


無性に胸がドキドキしていた。


新しい世界が開けるような予感がして、胸のわだかまりを吐き出すように質問する。


 瀬戸内さんは少し考えてから口を開いた。


「……心から信用する必要ってあるんですか?」


 逆に質問されて、戸惑った。


信用しなくてもいいなんて考え、浮かんだことすらなかった。


黙り込む私に、瀬戸内さんは持論を展開し始める。


「人って、そんなにすぐに信用できるものじゃないと思うんですよね。

それに、最初は信用できると思っていても、うわべの姿に騙されて全く信用できない人だったってこともあるじゃないですか。

信用できるかどうかは積み重ねだし、深く相手を知っていかないと分からないことですよね」


「はい……」


 だから怖いんだ。


信用できると思っていたのに、裏切られたら。


深い間柄にならないと分からないからこそ、分かった時の傷は深い……。
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