社内恋愛なんて
「私がまだ、元彼のことを好きってことですか?」


「好きとは違うけど、引きずってるかもしれないですね。

許せないでしょ?」


 私はまた、俯いた。


胸の古傷がずきずきと痛む。


「……許せるわけ、ないでしょう」


 口に出すと、思いのほか重い言葉だった。


許せるわけない。


この言葉に憎しみが入っていないとは言い切れない。


憎んでいるなんて考えたくもないけれど、指摘されるとそうかもしれないと思った。


「私も、浮気した相手のこと一生許さないって思ってました。

でも、新しい恋をして、元彼のことがどうでもよくなると、一生許さないって固く心に決めてたのに、なんか気が付いたら許してました」


 瀬戸内さんは笑って言った。


一生許さないと固く心に決めるなんて、情熱的な人だなと思った。
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