社内恋愛なんて
それから色々と仕事を手伝い、受付の女の人たちが帰ったあと、人事部のフロアへと戻るためにエレベーターを待っていた。


ふと外を見ると、日が暮れて暗くなっている。


早く残っている仕事を終わらせて帰りたいなと、上昇してくるエレベーターランプを見上げていた。


するとその時、突然腕を掴まれて、エレベーターの隣の非常階段に引きずりこまれるように入らされた。


なに、痴漢!? 変質者!?


驚いて声を上げようとした時、「しっ」と人差し指を唇に当てられた。


引きずり込んだ人物の顔を見ると、守だった。


「なにするの、突然!」


 守だと分かった途端、急に強気になった私は掴まれた腕を払いのけた。


守は私の顔を睨むようにじっと見ている。


「なに、なんなの。私、忙しいんだけど」


 不快感を露わにして言った。


「…………」


 守は唇を噛みしめて、私の目を見つめたまま喋らない。


「用事がないなら、もう行くけど」


 守に背を向けてエレベーターに戻ろうとすると、守は意を決したように口を開いた。
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