社内恋愛なんて
「剛田部長と付き合ってるって、本当か?」


 ドキリとして足が止まる。


そうか、同じ会社なんだから守の耳にも入ったのか。


隠す必要もないし、むしろ知ってほしいという気持ちの方が大きかったから都合がいい。


私は向き直って守の目を見て言った。


「そうだよ。部長と付き合ってる」


 守は表情を崩さなかったけれど、雰囲気や目の表情からショックを受けているのが分かる。


その顔に、少し優越感を抱いた。


私はいつまでも守のものじゃない。


過去の辛い記憶の呪縛から解放されて、新しい恋をしているんだ。


幸せに、なるんだから。


「黙ってないで、おめでとうの一言くらい言ってよ」


 つい最近、再び守に告白されたことを忘れたわけではない。


むしろ、忘れてないからこそ言った。


守にも私は味わった苦しみを、ほんの少しでも味わえばいいと思っている自分がいた。
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