社内恋愛なんて
「おはよう」


 部長は眩しすぎるほどの笑顔を向けた。


「お、おはようございます! すみません、家の前まで来てもらっちゃって」


 私はもう、恥ずかしくて顔が上げられなかった。


頬が赤くなっていることを気付かれないように、俯きながらシートベルトをつけることに専念する。


「全然。俺が家の前まで来るって言ったんだし」


 部長の口調は、会社の時よりもフランクに感じた。


それが余計に特別な感じがして、私の緊張はマックスに達していた。


ああもう、心臓が口から飛び出そう。


「さて、じゃあ行きますか」


 私がシートベルトを締めたことを確認すると、部長は車を発進させた。


車が動くと少しだけ緊張が和らいだ。


部長が運転に集中して、私を直視しなくなったからかもしれない。
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