社内恋愛なんて
「私も東京にきて9年くらい経つので」


「9年? どうして俺より長いんだ?」


「大学が東京だったんで。部長は大学どこだったんですか?」


「ん、東北大だった」


 おお、東北大。


さらりと言ったけど、東北で一番の難関大学じゃないですか。


さすがエリート。


「それより、今日は部長って呼ぶのやめにしないか?」


 部長は苦笑いを浮かべて言った。


「あっ、そうですよね。周りからも変な風に見られますしね。剛田……さん?」


 恐る恐る呼ぶと、部長はぷっと吹き出した。


「名字で呼ぶのもおかしいだろ」


「えっ! じゃあ、せ、誠一郎……さん?」


 下の名前を口にしただけで、かあっと顔が赤くなった。


それを見た部長は、優しげに目を細めた。


「さん付けもいらないよ」


「いやっそれは! 付けさせてください!」


 慌てる私に、部長は面白そうに笑う。
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