社内恋愛なんて
「じゃあ、その代わり敬語なしな」


「ええっ!」


 困る様子の私に、部長はイタズラっぽくニヤリと笑う。


観念して頷いた。


「……はい、頑張ります。

あっじゃなかった、が、頑張る! 

ああ、なんか違和感ありすぎなんですけどっ!」


 あわてふためく私に、部長は優しい眼差しで微笑んだ。


「いいよ、敬語使っても。ゆっくり慣れていけばいいさ。でも、部長はなしな」


 私はほっとして、部長に笑顔を向けた。


「はい! ……誠一郎さん」


 少し尻すぼみになりながらも、下の名前で呼ぶことができた。


恥ずかしくて俯くと、部長が私の頭をぽんっと撫でた。


「よくできました」


 身体が一気に熱くなる。


胸がきゅーっと締め付けられて苦しいくらいだ。


頭を撫でられただけなのに、こんなに嬉しいなんて。


部長、ずるいです。
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