社内恋愛なんて
今さら何を戸惑っているんだ! と思う一方で、どうやって断ろうと断り文句を必死で考えている私がいた。


どうする? どうしよう。


いいの? いや、いいんだけど、でもほら、早くない?


でも、これは普通の流れだよね。


だって付き合ってるんだもん。


いい大人なんだもん。


でも、私は、まだ……。


「今日はもう、疲れたから帰るか」


 部長は大きく右折すると、明るい声で言った。


「えっでも……」


 俯いた顔を、弾かれたように上げて部長を見た。


部長は明るすぎるほどの笑顔だった。


「家はまた今度な。そういえば部屋汚かったの思い出した。

今度片付けてから来てくれよ」


 私を気遣って明るく言ってくれているのだ。


私が戸惑っているの、分かったから……。
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