社内恋愛なんて
その文面を見て、少し興奮した。


美奈子には旦那がいるからいけない、という気持ちは生まれなかった。


逆に、お互い相手がいると分かった上で会うんだから、都合がいいと感じた。


その頃、みあは多忙で俺は放っておかれることが多かった。


正直、性欲も溜まっていたし、寂しい気持ちもあった。


だから、俺は、美奈子の誘いに乗ったんだ。


絶対にバレないという、何の根拠もない自信もあったから。


 久しぶりに会った美奈子は、少し大人っぽくなっていて妙に色気を感じさせた。


人妻オーラというか、安定して成熟した芳(かぐわ)しい色気を放っていて、赤い唇ばかり見てしまった記憶がある。


 この日、美奈子とどうにかなろうという気はたぶんなかった。


正直、よく覚えていないし、気持ちがふわふわしていた。


ただ、二人で会うことはいけないことだという自覚はあった。


メールの文面から誘われているような気はしていたけど、まさかありえないよなっていう気持ちもあった。


あわよくばという気持ちがあったのかと聞かれれば、あったのかもしれないし、はっきりいって自分でもよく分からない。


飲みくらい、まあいいだろうって自分に言い聞かせて、後ろめたい気持ちを封印していた。
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