社内恋愛なんて
ポツリと頬に冷たい水滴が落ちてきて、空を見上げると、暗いビルの谷間から雨がざあっと降ってきた。


 今日は本当についてない。


今日どころか、もうずっとついてない。


三年前にみあを失った日からずっと、俺の運気は下がりっぱなしだ。


 こんな日は、浴びるほど酒が飲みたい。


でも、空元気を装って場を盛り上げられる気分でもない。


しっぽりとサシで酒を飲んで語りたい。


 ポケットからスマホを取り出して、連絡先を検索する。


同期で親友の吉川に電話しようとして、指先が止まる。


吉川には何でも話していた。


でも、唯一話していないことがある。


それはみあと別れた本当の理由。


吉川には、本当のことを伝えたくて、浮気したと言った。


そしたら吉川は一瞬、俺を軽蔑するような眼差しを見せたから、咄嗟に嘘を吐いてしまった。
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