社内恋愛なんて
でも、それも全て真実じゃない。


一夜の過ちなんかじゃない。


言い逃れできないほど、何度も身体を重ねた。


しかも相手は元同僚で、みあの友達で、そして人妻だ。


遊びとも、また違う。


美奈子と将来を共にする気はなかったけれど、気が付いたらどっぷりはまっていた。


そんなこと、吉川にも親父やお袋にも、姉貴たちにも言えるはずがない。


知ってるのは、残酷なことにみあだけだ。


 最低なことをした上に、更に嘘を吐いてしまった罪悪感で、彼らとの間に見えない壁を作った。


吉川だって、両親だって、怒っていたけど俺を見放したわけじゃない。


吉川は、誘えばいつだって駆けつけて俺の話を聞いてくれるし、実家に帰れば温かくて美味しいご飯を用意してくれる。


でも俺は、それが堪らなく辛く感じる。


こんな俺に優しくしてくれるのが、申し訳なくて逃げ出したくなる。


みあだけじゃなく、彼らも裏切ってしまったこと。


傷つけてしまったこと。


失望させてしまったこと。


彼らの笑顔を見る度に苦しくて、申し訳なくて、今でも嘘を吐いていることが重くのしかかっている。
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