社内恋愛なんて
みあと一緒になれるなら、会社を辞めたっていい。


もっと給料のいい所に就職してって言うんなら、どんなにきつい仕事でもやる。


親や友達と縁を切り、駆け落ち同然で知らない土地に引っ越したって構わない。


毎日責め立てられたって、それでみあの心が少しでも楽になるならいくらでも責めればいい。


それくらいの覚悟はできてるのに、現実に受ける罰は、これだけは嫌だと思った罰のようだ。


 雨が激しさを増していく。


傘もささずに俯いて歩く俺に、通行人は怪訝そうな目で見やり間隔を開けて歩く。


風俗店や古びた居酒屋が並ぶ路地を、ただひたすら下を見て歩いた。


「オ兄サン、今晩私とドウ? 安クスルヨ」


 片言の日本語で話しかけてくる売春婦を無視し、


「お兄さんイケメンだねぇ。特別に可愛い女の子がいっぱいいる店紹介してあげるよ」


 見るからにチャラそうな男からのキャバクラのキャッチセールスをこれまた無視して足早に歩く。


俺に話しかけてくる奴は、こんなのしかいないのかと嫌になる。
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