社内恋愛なんて
「おい」


 催促するように一歩踏み出すと、男たちはビクっと肩を上げてそのまま一目散に走り去ってしまった。


 一人残された俺は、雨に打たれながら立ち尽くす。


また、罰を受けられなかった。


俺が望む罰は何一つ受け入れてもらえない。


お前が味わう罰は、諦めることだと言われている気がした。


「……ちっきしょう」


 項垂れながら、顔を歪めて泣いた。


涙と鼻水が出て、顔がぐちゃぐちゃになりながら泣いた。


「ごめん……。ごめん……」


 身体の奥から溢れてくるのは謝罪の言葉。


どんなに謝ったって、許されないよな。


分かってるけど、言わずにはいられない。


「ごめん、みあ、ごめん」


 直接本人に謝りたい。


でも、それすらも許してはもらえない。


 好きだよ、みあ。


今でも、ずっと、これからも。


 薄汚れた黒いビルの谷間から降り続ける冷たい雨。


星の見えない東京の夜空は、先の見えない絶望した未来へと繋がるブラックホールのようだった。
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