社内恋愛なんて
データファイルを棚に置き、さて上の段はどうやって片付けようと考えを巡らせていた。


仕方ない、面倒くさいけれど、地下倉庫に行って脚立を取ってこよう。


 考えがまとまってドアの方を向くと、守がじっと私を見つめていた。


「まだいたの?」


 もう行ったとばかり思っていた私は驚いて言った。


「上の段、届かないの?」


 私の問いには答えずに、守は表情を変えずに言った。


どうして分かったんだろうと驚いたけれど、守は昔から私が何かを言わなくても、考えていることが分かることが度々あった。


例えば、喉乾いたなぁと思っていたらドリンクを差し出してきたり。


『どうして分かったの!?』


 と目を真ん丸にして訪ねると、


『思ってること顔に出てて分かりやすいから。それに、俺はみあをよく見てるからね』


 と微笑みながら答えた、あの頃。


 きっと今も上の本棚を見つめていたから分かったんだろう。


もう私の思ってることなんて、分からなくていいのに。
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