社内恋愛なんて
「どうした?」


「今日、何時頃終わりますか?」


「うーん、早めに終わると思うぞ」


「じゃあ、今日、一緒に帰りませんか?」


 部長は一瞬、驚いたように止まり、すぐに柔和な笑顔を浮かべた。


「もちろん、いいよ。送ってく」


 仕事用の声音から、彼氏としての優しく甘い声音に変わったので、ドキリとする。


途端に胸がドキドキしてきた。


「駐車場から一緒に乗るとまずいので、外で待ってますね」


 顔が赤くなってしまったのを気付かれないように、早口で言った。


「分かった。楽しみにしてる」


 部長は一歩私に近付き、私の頭をぽんと撫でて嬉しそうな笑顔を向けた。


素敵すぎる笑顔に、胸がきゅっと締め付けられる。


「これ以上一緒にいるとキスしたくなるから行くな」


「えっ!」


 びっくりする私に、部長はくしゃっとした笑顔を見せると、そのまま給湯室から出て行った。


部長、ここでその台詞は、私には刺激が強すぎます。


クラクラするほど魅惑的で、にやけてしまう顔を元に戻せない。


 早く終業時間にならないかな。


浮き立つ気分で仕事を続けた。
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