社内恋愛なんて
「みあ? みあ!?」


 ドンドンドンと扉を叩く音。


壁一枚の距離に部長がいる。


でも、その距離がとても遠くに感じる。


 ……とりあえず、出なきゃ。


心配している部長を無視するわけにも行かず、写真の入った封筒をトレンチコートの中に入れて、鍵を開けた。


 すると、すぐにドアが開き、緊迫した様子で青ざめている顔の部長が現われた。


「大丈夫か!? 全然返事ないから倒れてるのかと思った」


「あっ……うん、ちょっと、突然気分が悪くなっちゃって……」


 たぶん、今の私は真っ青な顔をしているから、真実味があるだろう。


部長は心配そうに私の顔を覗き込み、そして私の手を取り優しく引き寄せた。


鼻先が部長の胸に当たる。


「良かった、無事で。なんだか突然、嫌な予感がしたんだ」


 ぎゅっと抱きしめられ、本気で私を心配してくれた気持ちが伝わってくる。


私は、部長に愛されている。


そう感じるのに、それがとても恐ろしい。


 ――男の人は、愛する人がいても浮気ができるのですか?
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