社内恋愛なんて
「会ったのは日中だ。


もちろん面接だから仕事中だ。


ホテルのロビーで久しぶりに会った時、まず驚いたのは服装だった。


スーツを着てこいとまでは言わないが、ひらひらの膝上スカートに、少し谷間が見える露出が高めの服装だったのには驚いた。


しかもやたらと慣れ慣れしくて、会社の説明よりも俺の私的な近況ばかりを聞いてくる。


挙句の果てに、あからさまに身体の関係を誘われた時はさすがの俺もぶち切れそうになったよ」


「えっ!?」


 驚いて声をあげると、部長は辟易した顔で頷いた。


「忙しい中時間を割いて会ったのに、本当の目的はこれかと思ってうんざりしたよ。


俺はこういうしたたかで自信満々の女性は好きじゃないんだ。


俺に断われた時、まさか自分の誘いを断る男がいるなんてって顔された時は、本気でイラっときた」


 その時の状況を思い出したのか、苦々しい顔付きになっていた。


本当に腹が立ったということが伝わってくる。


部長の言葉に不審な点はないし、嘘をついているようにも見えない。


不安だった気持ちがすっと消えて、少しずつ冷静さを取り戻す。
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