社内恋愛なんて
「離婚して、新しい男を見つけるのに必死なんだなって思っていたが、写真を撮られていたなら、もしかしたら俺をはめる為に呼び出したのかもしれないな。

でも、一体こんなことして何になるっていうんだ」


「私のことが、よっぽど嫌いなのかな……」


 ポツリと零れた言葉に、部長はじっと私の目を見つめた。


「……過去に何か、あったのか?」


 ぎゅっと拳を握りしめる。


部長に言うべきか言わざるべきか。


昔、婚約していて、浮気されて破談になった話なんて、マイナスの要因でしかない。


本当はこんなこと言いたくないけど、秘密にしておくのも不誠実な気がした。


 俯きながら、ぽつりぽつりと全てを話す。


守のこと、美奈子のこと。


そして、そのことがきっかけで人を信じることが怖くなってしまったことを。


 部長は黙って、じっと聞いていてくれていた。


私の過去を知ったら、部長はどう思うのだろう。


それが気になって、怖くて不安で、話終わった後も顔を上げることができなかった。
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