社内恋愛なんて
乾杯をしてから30分後。


どんどん盛り上がっていく店内に、守が走って入ってきた。


「ごめん、遅れた!」


 息は上がってるし、額に汗がじんわり浮き出ている。


会社から店までスーツ姿で走ってきたのかもしれない。


「守っち遅―い」


 と少し酔っ払いはじめた女性たちが言った。


「わりぃ、わりぃ、定時前に急に仕事が入って」


 守は絡んできた女性たちが座っているテーブルではなく、真っ直ぐに私のいるテーブルに腰を降ろした。


「それでよくこの時間に帰れたな」


 入社当時から守と仲のいい吉川君が言った。


吉川君は経理部で、眼鏡をかけていていかにも真面目そうな顔をしている。


守とは正反対の性格のように見えるけれど、不思議と気が合うらしい。


「気合いで終わらせてきた」


「さすが守」


 
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