社内恋愛なんて
美奈子、登場
結局、あの日は部長の家に行くことはなかった。


散々泣いて、慰めてもらって、浮気疑惑は消えたけれど、どうしてあんな写真が私の家に投函(とうかん)されたのか謎は残ったままだった。


そんなもやもやした状態で、心から楽しむことなんてできないし、写っていた人物が美奈子だっただけに情緒不安定さを完全に取り除くことは無理だった。


 いつものように外食して、そのままさようなら。


せっかく前に進もうと思っていたのに、出鼻をくじかれてしまった。


でも私は、もう以前の言いたいことも言えずに我慢してしまう臆病な私ではない。


このまま黙って嫌な気持ちを抱えたまま不安に過ごすことなんてしたくない。


 予想外ではあったけれど、いつかは話さなきゃいけないと思っていた守とのことも、部長に伝えることもできた。


そして部長は、こんな私を受け入れて包み込んでくれた。


今を大切にするために、過去と向き合う覚悟を決めた。


そう……美奈子と会う約束をした。
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