社内恋愛なんて
「こんなことするなんて、本当暇人だよね。

離婚して他人の幸せな話が許せなかったからこんなことしたの?

そんな性格だから離婚されたんだよ」


 美奈子はかっと赤くなって、グラスに入った水を勢いよく私に浴びせかけた。


頭から水を被り、前髪から水滴がしたたり落ちる。


「お返し」


 私も手元にあった水を、美奈子の顔面めがけて浴びせかけた。


ばしゃっと音がして、見事に水が顔に当たり、濃いアイメイクが滲(にじ)んで、道化師のようになった。


「何すんのよっ!」


 美奈子は怒って声を荒げた。


私は冷静に美奈子を見据える。


「最初に水かけてきたのはそっちでしょ」


 怒りにわなわなと震え、今にも食いかかってきそうな美奈子に、店員が恐る恐る声を掛ける。


「あの……大丈夫ですか?」


 声を掛けられても耳に入っていない様子の美奈子に代わり、私が静かにはっきりと答える。


「大丈夫です。今取り込んでるんで、下がっててください」


「あ、はい。じゃあ、あの、おしぼり置いておきますんで」


「ありがとうございます」
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