社内恋愛なんて
結ばれた夜
美奈子と別れて帰る道すがら、なんだか無性に部長に会いたくなった。


美奈子と会うことを、部長はとても心配していた。


私がトラウマを抱えていることを知ったから、過去の出来事を思い出して傷つかないか不安だったのだと思う。


 駅のホームで電車を待ちながら、このまま家に帰るのは嫌だなと思った。


部長に会いに行きたい。


今日あった出来事を報告して、安心させたい。


でも、会う約束なんかしてないし用事があるかもしれない。


それでも、今何をしているのか聞くだけ聞いてみよう。


 電話を掛けると、すぐに通話が繋がった。


「もしもし、誠一郎……さん?」


 久しぶりに下の名前で呼んでみる。


名前で呼んでくれと言われていたのに、つい癖で部長と呼んでしまっていた。


美奈子が誠一郎と呼んでいたのに対抗する気持ちもあった。


やっぱり付き合ってるのに部長のままはおかしいと今更気付く。
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