社内恋愛なんて
斜め後ろに立つ誠一郎さんが、小声で話しかける。


「俺がちゃんと説明できるか半信半疑だっただろ」


 図星をつかれて、思わず挙動不審になる。


「いや、そんなことは……」


 慌てて否定するあたりが嘘くさいと自分でも思う。


バレバレすぎて冷や汗が出る。


「おしおき。目瞑って」


 耳元でぼそりと囁かれる。


 え、おしおきってまさか、ここでキスとか!?


どうしよう、監視カメラあるのに! と思いながらもドキドキしながら目を瞑ってしまう私。
 


すると、頬をむぎゅっと指でつままれた。


「痛たたっ」


 驚いて目を開けると、誠一郎さんは「キスだと思っただろ」といたずらっぽい笑顔を浮かべていた。


 エレベーターが開くと、すっと無表情になって何事もなかったかのように歩き出す。


唖然として固まっていた私は、エレベーターの扉が閉まりそうになって慌てて飛び出した。
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