社内恋愛なんて
「みあを、地味でブスな淫乱女だと罵った」


　え、そこ？ と拍子抜けして驚いた。


私を悪く書いたのは、その一文だけだったし、他にも根拠のない悪意のある辛辣な言葉は沢山あった。


けれど、誠一郎さんはそのことにとても怒っているらしく、珍しく顔に怒りを滲ませている。


「あの一文がなければ、犯人を調べようなんて思わなかった。

斉藤だってまさか調べられるとは思っていなかったらしい。

訴えるつもりは全くなかったが、名誉棄損で訴えることもできると言うと、泣いて謝ってきたよ。

だが俺は更に、弁護士に今後一切みあに関わるなと誓約書を作成させてサインさせた。

俺を本気で怒らせたらどうなるか、身に染みて分かったようだ」


　最後は満足気な様子で誠一郎さんは言った。


「なんで今まで教えてくれなかったの!?」


「言うタイミングがなかったから」


　いや、だからってそんな大事なこと……。


驚きすぎて固まっている私に、誠一郎さんは不安気な顔で覗き込んできた。


「みあを不安にさせたくなくて勝手に進めてしまったんだが、駄目だったか？」


　私は誠一郎さんの顔を見て首を振った。
< 348 / 359 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop