社内恋愛なんて
 吉川君は言いにくそうに私から視線を外して、頬をぽりぽりと掻いた。


 わざわざ皆から見えないところで聞きにくる言いにくいことって何だろう。


なかなか言い出さない吉川君に催促したいのをぐっと堪えて、彼が言いだすのを待った。


「……守のこと、どう思ってる?」


 ようやく聞けた質問が守に関することで、なんだか拍子抜けした気分だった。


どうもこうも、守とはとっくに終わっている。


それは吉川君も知っているはずだった。


「どうも思ってないよ。守とはただの同期だもん」


 そう、ただの同期。


友達でも親友でもない。


すると吉川君は複雑そうな表情を浮かべた。


「守は、まだ湯浅のことが好きなんだ」


 吉川君の言葉に唖然とした。


好き? 守が私を?


 さっきずっと好きな人がいるって言ってたのは私のことだったの?


「まさか。吉川君の勘違いじゃないの?」


 顔が引きつっていた。


だって、守と私は三年も前に終わっている。


「いいや、勘違いなんかじゃない。守は湯浅と別れたくなかったんだ。別れた後もずっと好きだって言ってた。すっと好きでい続けるとも言ってた」
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