社内恋愛なんて
吉川君の告白に、私は何も答えることができなかった。


守が私と別れたくなかったことは知っている。


別れる時に何度もやり直したいと言われた。


今でも好きだと言われても、嬉しいとは思わなかった。


誰かに好意を持たれることは大抵は嬉しいけれど、守は別だった。


むしろ、何を言っているの?と怒りたい気分だった。


どの口が言うの。あなたは、自分が何をしたのか分かっているの?


「そんなこと聞いても、もうどうにもならないよ。私と守は、三年前に終わっているんだから」


 冷たい言葉に、吉川君は縋るような眼差しで私を見た。


「守がしたことを許せない気持ちは分かる。でも、人間誰でも間違いを起こすことはあるだろ?」


 ……間違い。あれは間違いなのだろうか。


心がどんどん冷たくなっていく。


「取り返しのつかない間違いだってある」


「人生に、取り返しのつかないことってあるのか? あるんだとしたら守はこの先どうやって生きていけばいいんだよ」


 吉川君の目にうっすらと涙が浮かんでいた。


私だってずっと聞きたかった。


私はこれからどうやって生きていけばいいんだろうって。


今ようやく前を向いて恋愛したいとまで思えるようになったのに、また傷口を抉られるようなことを言われて、私だって泣きたいよ。
< 37 / 359 >

この作品をシェア

pagetop