社内恋愛なんて
「いちゃついてるんじゃなくて、これは……」


 酔っぱらっている上に、こんな姿を見られて動揺してしどろもどろになっている私の代わりに、部長が私の言葉を遮るようにして説明し出した。


「湯浅が立っていられないほど酔っているようだから、上司として部下を送ろうとしているまでだ」


「ああ、そうだったんですね。じゃあ、もう大丈夫です。俺が送りますから」


 守は、部長から私を引き取ろうと近付いた。


「いや、俺が送る。君は宴会の途中だろ? 俺はもう帰るところだったから」


「部長もこの店で飲んでたんですね。でも、酔った相手を介抱するのは一緒に飲んでた人の責任です。みあの上司だろうと、この場では関係ない」


 守の口調は険のある言い方で、見ているこちらがハラハラするくらいだった。


けれど部長も負けずに強い口調で言い返す。


「いや、俺が送る」


「どうして」


「こんな状態の湯浅を放っておけないからだ」


 守は一瞬、言葉を飲んだ。


部長の言葉はまるで私のことが好きだと言っているように聞こえた。


私も一瞬ドキリとしたけれど、そんなことあるはずがないとすぐに疑惑を打ち消した。
< 44 / 359 >

この作品をシェア

pagetop