社内恋愛なんて
気まずい社内
都心の一等地にそびえ立つビルディング。


グッドデザイン賞を受賞した23階建ての本社ビルには、エリオスターと社名が大きく飾られていた。


 電子機器を扱うエリオスターの知名度は高く、毎年就職したい会社トップ10にランクインしている。


そんな会社に奇跡的に就職できた私、湯浅みあは、近代的デザインのオフィスの片隅で大きなため息を漏らしていた。


 分厚い書類の束をシュレッターにかけながら、寝不足の目を擦る。


先月29歳の誕生日を迎えたから、就職して早6年になる。


入社した当初は、毎日が新鮮で綺麗な自社ビルに通えることに誇りを持っていたのに、今では何の感慨も湧かない。


「なんてことしちゃったんだろう、私は……」


 今更どうすることもできないのに、ポツリと呟く。


昨日の出来事を思い出すと、頭が痛くなる。


過去に戻ってやり直したいと思うけれど、戻ったところで変わらないんじゃないかとも思う。


気持ちが暴走してしまった。


もうすぐ30歳になるというのに、後先考えない行動を取ってしまったことが嫌になる。
< 5 / 359 >

この作品をシェア

pagetop