社内恋愛なんて
私が動いた反動のせいか、部長が再び「んんっ」と声を上げて動いた。


わわ、どうしよう。起きちゃった? 


慌てて息を殺して石化のように固まる私。


すると、部長の手が伸びてきて私の肩を掴み自分の胸へと引き寄せた。


 ベッドの中で抱きしめられる。


嬉しいけれど、一体どうすれば。


たぶん、寝ぼけているだけだから深い意味なんてないんだろうけど。


部長の匂い。


部長の温もり。


包み込まれるような感触が心地いい。


この胸の高鳴りは絶対に恋だ。


どうしよう、好きな気持ちを抑えられない。


「おはよう、湯浅」


 部長の胸に顔を押し付けていたら、耳元で囁かれた。


仕事で聞く声とは違う優しい声で、耳元に息を吹きかけられるようなくすぐったい気持ちがした。


「起きてたんですか!?」


 驚いて顔を上げると、部長はとても穏やかな顔で微笑んでいた。


「さっき起きた」


 仰向けで、寝起きの部長は、独特の色気を身に纏っていた。


アンニュイな様子がどこかセクシーで、落ち着いた大人の男の余裕さえ感じられる。
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