社内恋愛なんて
 寝ぼけてはいないようなのに、抱き締めた手を離してはくれない。


やっぱり私たちは昨晩深い仲になってしまったんだろうか。


「あの、部長、私、昨日……」


 言葉を途切れ途切れに話して、部長の様子を窺う。


部長は何一つ変わらぬ顔で、「ああ、うん」とだけ言った。


それだけじゃあ、私が昨日何をしたのか分からない。


「私、昨日、部長に何しました?」


 思い切って尋ねると、部長はきょとんとした顔で私を見て、それからニヤリと顔を綻ばせた。


「……すごかったよ」


 凄かった!? 何が!?


 顔面蒼白になる私。


私は一体、何をしたんだ!


 動揺した様子の私に、部長は昨日あったことを話し出した。


「帰らないでって泣きながら抱きついてきて……」


「えぇ!?」


 大きな声を出して驚いている私を見て、部長は面白そうに笑いながら更に言葉を続ける。


「抱いてって言うからさ……」


 やだ、私、自分から誘ったの!?
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