社内恋愛なんて
小さめのダイニングテーブルに並べると、時間をかけず簡単に作ったにも関わらず、なかなか豪華な見た目になった。


ソファから移動してきた部長は、出来映えに目を丸めた。


「凄いな、こんな短時間で」


「たまたま作り置きしてあった食材があったので。残り物ですみません」


「そういえば、毎日弁当作ってきてるもんな」


「はい、料理を作るのは昔から好きで、何より節約になりますし」


 部長と私は朝食を前にして、向い合せに座った。


「それに、趣味は掃除なんだろ?」


「趣味というか、ストレス発散方法が掃除なんです。力を込めて雑巾がけするといい運動になるんですよ。あっ冷めちゃうので食べましょう」


 二人揃って、手を合わせて「いただきます」と言い、食事に手を付けた。


部長はお味噌汁をすすると、「うまい!」と大きな声で言ってくれたので嬉しかった。


「いい奥さんになりそうだな」


 部長は目を細めて、とても美味しそうに食べながら言った。


喜んでくれているのが伝わって、くすぐったいような嬉しさが込み上げてくる。


「もらってくれる人がいないんですけどね」


 照れ隠しに自嘲しながら言った。すると部長は、


「もらっていいなら、ぜひとももらいたい」


 と、真面目な顔をして言うので笑ってしまった。


「わりと本気なんだが……」と部長は呟いた。
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