社内恋愛なんて
乗り込んだタクシー。


目的地である彼女のマンションに向かって車は走り出した。


 発車してほんの数分ほどでうつらうつらとまどろむ彼女。


かなり酔っているなと思っていたけれど、もしかしたら予想よりもきつい状態だったのかもしれない。


彼女はいつだって無理をしてしまう性格だから。


 急カーブで車体が揺れて、彼女の身体が俺にもたれかかってきた。


内心、ナイスカーブ!と喜ぶ。


寄りかかって寝てくれないかなと思っていたからだ。


 俺の肩に頭を寄せながら、寝息をたてて寝る彼女。


無防備なその寝姿が可愛くて、思わず微笑む。


 タクシーの運転手に道順を教えながら、どさくさに紛れて彼女の手を握る。


強引だったけれど、送っていけて良かったなと思った。


昨日、彼女とキスをして確信した。


俺はこの子が好きだ。


今までは部下だからとか、まだ彼女のことをよく知らないし、などと理由をつけて、この気持ちから逃げていた。


気になる存在だったけれど、確信もって好きだと言えるほどの強い気持ちではなかった。
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