社内恋愛なんて
でも、あの日、抑えきれなくなった理性によって気付かされた。


分かったからには、もう気持ちは抑えない。


 マンション前に到着し、彼女を揺り動かすも起きない。


何度声を掛けても、まったく起きない。


とりあえず外の空気に当たれば起きるかと思い、再び彼女を抱きかかえてタクシーを降りる。


冷たい夜風を浴びた彼女は、「う~ん」と眉間に皺を寄せて半分ほど目を開けた。


「おい、着いたぞ。歩けるか?」


「……歩けない」


 まだ完全に酔っている。


こんな彼女を放っておけるわけがないので、彼女の部屋まで送ることにした。


「部屋はどこだ?」


「四階……です」


 目は瞑っているが、寝ているわけではなさそうだ。


完全に寝てしまわないうちに部屋まで行かないと、中に入れなくなる。


 四階に着き、部屋はどれだ? と聞くと、部屋番号を言った。


その部屋のドアに行き、鍵はどこだ? と聞く。


すると、鞄を指さした。


どうやら鞄から取れと言いたいらしい。


仕方なく彼女を一回下に降ろして、鞄を開ける。
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