社内恋愛なんて
「中を見るぞ。いいんだな?」


 彼女は壁に寄りかかったまま、うんともすんとも言わない。


すまん、と一応心の中で謝ってから鞄の中を探す。


すると中は綺麗に整頓されていて、鍵はチャックのある小さなポケットの中に入っていた。


 鍵を回し、ドアを開ける。


彼女を玄関に座らせ、靴を脱がした。


さすがに中に入るのはまずいだろうと思うも、靴を脱いだそばから玄関で寝てしまっている彼女を見て、また心の中ですまんと呟いて中に入る。


 彼女を抱きかかえ、通路を進みドアを開け、ワンルームの部屋に入った。


落ち着いた色合いで統一された女の子らしい部屋。


散らかっている様子もなく、彼女の几帳面さが表われていた。


 彼女をベッドに横にさせ、布団をかけようとして手が止まる。


ジャケットは脱いでおかないと皺になるな。


ジャケットを脱がすと、白いブラウスから胸の形が見えて、どきっとする。


いかん、いかん。


よこしまな気持ちは慎まないと。


ただでさえ、昨日大変なことをしてしまったのだから。


 布団を掛けて、彼女の寝顔を見つめる。


寝息をたてている唇が半開きで、思わず吸い込まれそうになった。
< 69 / 359 >

この作品をシェア

pagetop