社内恋愛なんて
「どうしたんだ」


「一緒にいて。もう一人は嫌」


「そうは言っても……」


「お願い、帰らないで」


 彼女は何度も帰らないでと言いながら、しくしくと泣き出した。


泣き上戸なのだろうか。


困り果てながら、子供をあやすように彼女の頭を撫でる。


「分かった、帰らない。一緒にいる」


 すると彼女はピタリと泣き止んで、俺の手を引っ張りベッドに招き入れようとする。


「待て待て、それはまずい」


 俺がベッドに入ることを拒むと、彼女はまた泣き出した。


泣き真似などではなく、大粒の涙を零しながら傷付いている表情を浮かべるので、根負けしてジャケットだけ脱いでベッドの中に入った。


 俺の胸に顔を寄せながら、満足そうな笑みを浮かべて瞳を閉じる彼女。


彼女のベッドの中で、彼女を抱きしめながら横になり、天井を見上げてため息を吐いた。


 この状況は色々とまずい。


もちろん、嫌なわけではないし嬉しい気持ちも当然あるわけだが、それ以上に性欲を我慢するのがきつかった。
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