社内恋愛なんて
 酔った部下を送っていき、同じベッドで寝るなんて、男としてダメだと思う。


弱っている女性につけ入るような行為は卑怯だ。


そう思っていたはずなのに、彼女の涙を見たら帰れなくなってしまった。


 酔いすぎて泣いているだけにも見えなかった。


彼女の表情から逼迫した何かを感じた。


いつもの柔和な笑顔に隠されている心の痛みのようなものが垣間見えてしまったから、側にいてほしいと望むなら叶えてあげたいと思ってしまった。


それが例え、自分の倫理に反していても。


 天井を見上げながら、できるだけ彼女のぬくもりを意識しないように努める。


羊が一匹、羊が二匹……。


できるだけ、よこしまな考えが浮かばないように。


腕に当たる彼女の胸のふくらみに意識が向かないように。


羊が三匹、羊が四匹……。


「暑い……」


 突然彼女がむくりと起き上がって、おもむろにストッキングを脱ぎ始めた。


まあ、確かにストッキングをしたまま寝るのは、暑いし窮屈だろう。


脱ぐのを止めずにいたら、今度はスカートも脱ぎ始めたので、さすがに慌てた。


「待て待て! それはさすがに……」
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