社内恋愛なんて
 まいったな。


俺は天井を見上げながら、大きなため息を吐いた。


昂る気持ちを抑え過ぎて、もう余裕がなかった。


それなのに、こんなに煽るようなことをされては、襲ってくださいと言っているようなものだ。


酔っている女性に手を出してはいけないと分かってはいても、これはさすがに酷すぎる。


「自分が何を言っているのか分かっているのか? 酔っているとはいえ、男にそんなことを言うものではない」


 つい、きつめに言ってしまった。


しかし、彼女を大切に想うからこそ、自分を大切にしてほしかった。


 すると彼女は、じっと俺の顔を直視して、ゆっくりと口を開いた。


「……部長だからです。ここにいるのが部長だから、側にいてほしいんです。他の人には、こんなこと言わないです。部長じゃなかったら、家まで送ってもらったりしません。部長だから……」


彼女が言い終わらないうちに、言葉を塞ぐように口付けした。


また、俺の中でぷちっと何かが切れた。


もう止められない。


こんなことを言われて、止められるわけがない。
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