社内恋愛なんて
そんなことを思っていたら、彼女は俺に腕枕をされながら眠りについて、俺も気が付いたら眠ってしまっていた。


そして今朝、起きたら記憶がないという。


まあ、あれだけ酔っていたら当然のような気もするが、ほっとしたような残念なような複雑な気持ちだった。


 酔った彼女に手を出したという事実は、例えどんな事情があっても褒められるようなことではないから、忘れているなら忘れてくれた方がいい。


でも、俺にとって昨晩の記憶は、決して忘れたくないものだから彼女が忘れてしまったことが寂しかったりもする。


 彼女のぬくもり、彼女の声、彼女の肌。


そして、彼女の涙さえも全てが愛おしい記憶だ。


俺だけが覚えていることが、少し悲しい。


 駅に到着し、改札を抜ける。


そして運よくすぐに来た電車に乗り込み、座席に腰かけ目を閉じた。


 自分の行動が良かったのか悪かったのか。


たぶん、良くはなかった。


しかし、今また同じ状況になったら、きっと同じことをするだろう。


だからもう、考えることはやめよう。


それよりも、これからを考えよう。


前向きな「これから」を。
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