社内恋愛なんて
「おはよう」


 突然後ろから聞き覚えのある声がしたので、心臓がどくんと大きく跳ねた。


 ……部長だ!


 一気に頬が赤くなる。


振り返り、挨拶を返そうと口を開くと……。


「おは…」


「おはようございますっ!」


 最高の笑顔で挨拶する美人さんたちに、私の声はかき消された。


気のせいか、彼女たちの声がワントーン高くピンクがかっているように聞こえた。


 部長は私を含めた全員に、ニコリと微笑むと、そのまま何も言わず踵を返して控室に行ってしまった。


 ただおはようと言われて、最後に微笑まれただけなのに、胸がきゅんとしてときめいてしまう。


それは彼女たちも同じだったようで、部長がいなくなってからきゃっきゃと騒ぎ始めた。


「やっぱり素敵、剛田部長」


「あの若さで部長で、しかも独身でしょ」


「スーツが似合う~」


 やっぱり部長、人気なんだ。


モテることは前から分かっていたはずなのに、胸がズキリと痛む。
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