社内恋愛なんて
私なんかが、本気で相手にされるはずないよね。


付き合いたいけど、社内恋愛は無理って悩んでたのが馬鹿らしくなる。


思い上りも甚だしい。


彼女たちは私よりも若くて美人で素養もある。


なんだか一気に、力が抜けた。


 余計なことばっかり考えてないで、仕事しよう、仕事。


プロジェクターの準備や、椅子の配置を整えたりなど、率先して下働きをした。


身体を動かしていれば余計なことを考えずにすむ。


 考えない、考えない。これ以上好きになっちゃいけない。


元々、好きになってはいけない人だった。


プライベートは仕事に持ちこまない。


社会人として当たり前のことだ。もう立派な大人なんだから、すぐに頭を切り替えないと。


 時々視界に部長が見えたりしたけれど、私は目の前の作業に没頭するようにした。


 そして、会社説明会の受付時間が来て、リクルートスーツに身を包んだ初々しい姿の学生たちが続々と会場に入ってきた。


私はその様子を会場の隅に立ちながら眺めていた。
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