社内恋愛なんて
無事に説明会が終わって、後片付けをしていた。


時刻は19時をまわっていて、18時までが契約の受付の女の子たちを先に帰すことにした。


女の子たちが帰ると、大きな会場がしんと静まり返ってしまった。


さっきまで学生たちで賑わっていた会場内に、ぽつんと私だけが残されてしまったかのようだ。


早く終わらせて帰ろう。


そう思いながら、オーディオアンプを持ち上げた。


すると、ビルの管理人に挨拶に行っていた部長が戻ってきた。


「まだ帰ってなかったのか?」


 部長は、学生たちに見せていた明るい笑顔ではなく、オフィスにいる時の表情一つ変えない真面目な顔で私に近付いてきた。


きっとこの顔が、部長の素なんだろう。


「はい。でももうこれを片付けたら帰るところでした」


 すると部長は何も言わずに、私からひょいとオーディオアンプを取り上げて、スタスタと備品庫に向かって歩いていく。


私は慌てて部長の後を追った。
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