社内恋愛なんて
「そんな面倒かけられません。部長、疲れているはずですし」


「少し遠回りになるくらい全然平気だ。面倒だとも思わない」


「でも、本当に、大丈夫なんで……」


 どうしよう。


もう、上手い言い訳が思いつかない。


「俺の車に乗るのが嫌なのか?」


 頑なに断る私の態度に、さすがに部長もおかしいと思ったらしい。


私の顔を伺うようにして部長は聞いた。


「そういうわけではないんですけど……」


 私、とても失礼な態度取っている気がする。


でも、流されちゃいけない気もする。


「分かった。無理にとは言わない」


 煮え切らない言葉に、部長は諦めたようで、私はほっとした。


「その代わりと言ってはなんだが、今度の週末空いてるか?」


「え?」


 驚いて、思わず部長の顔を見上げる。


部長は恥ずかしそうに、こめかみを指先でぽりぽりと掻いていた。
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