社内恋愛なんて
 部長は、睫毛を伏せて呟くように言った。


私はこの場にいるのが耐えられなくなって、「じゃあ、私、会社行かなきゃいけないんで!」と言って、逃げるように会場を出て行った。


 ビルを出て、夜空を見上げた。


高層ビルの最上階はまだ明かりがついていた。


あそこに、部長がいる。


そう思うだけで、泣けてきた。


泣くくらいなら、断らなければいいのにと自分でも思う。


これから、何かが始まりそうだったのに。


部長は、私をデートに誘ってくれたのに。


このまま上手くいったら、付き合えたかもしれないのに。


 私は自分で、その全てを台無しにした。


好きだけど……。


好きだけど、ダメなんだ。


社内恋愛はできない。


社内恋愛だけは、どうしてもできない。
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