社内恋愛なんて
「なに、届かないの?」


「そう。踏み台がなくて困っちゃう」


「踏み台なんか必要ないだろと思ってたけど、必要とする人もいるんだな」


 失礼な、と思って睨みつけてやったけど、守は可笑しそうに笑っている。


「貸して。この棚に置けばいいんだろ」


 守は私から資料を受け取ると、簡単に一番上の棚に仕舞った。


「ありがとう」


 少し癪(しゃく)ではあるけれど、一応お礼は言わないと。


「どういたしまして。小さなお嬢さん」


 お礼なんか言わなきゃ良かった。


私はぷいと顔を逸らして、帰ろうと一歩を踏み出した。


すると、守がぐいと私の腕を掴んだ。


「待って」


「なに?」


 突然腕を掴まれたことに動揺する。


守は、さっきまで冗談を言って笑っていた顔から、真剣な表情に変わっていた。


「剛田部長と付き合ってんの?」


「は?」
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