社内恋愛なんて
「そういうこと言うなよ……」


 守はひどく傷ついた目をして弱々しく言った。


ほら、そういう風に傷付いた顔をするから、きつく言えないんだ。


いつも自分の気持ちを溜めてしまう。


私が一番傷付いたあの時でさえも、守が悲しい顔をするから、私は何も言えなくなった。


本当はヒステリックに罵詈雑言浴びせかけて、部屋中にあるものを投げつけてやりたかったのに。


色々な気持ちを全部呑みこんで、ただ静かに別れることを選んだんだ。


「……とにかく、私が誰と付き合おうが守には関係ないでしょ。ていうか本当に付き合ってないし。もういいでしょ。離して」


 掴まれた手を振りほどくようにして言った。


けれど、守は手の力を強めて放してはくれなかった。


「好きだ」


 突然の言葉に、固まってしまう。


守は真剣な表情で、切羽詰まった様子さえも感じられた。


「今更そんなこと言われても……」


 守の気持ちは、吉川君から聞いていた。


だから、凄く驚いたわけではないけれど、実際に本人の口から言われるとうろたえてしまう。


「俺はずっとみあが好きだから。プロポーズした時の言葉は嘘じゃない。俺は、一生みあだけを好きでいるから」


 守の言葉で、一気に過去の思い出が甦(よみがえ)ってくる。
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