花椿
ご婦人が、網を振り回して雀を追いかける与一に「お取り込み中ですか」と尋ねたその時、今しがた開けられた扉とご婦人の肩先の隙間をツーッと鶯がすり抜けた。
「あ!」
ご婦人と与一は、共に声をあげ扉の外へと駆け出たが、鶯は気持ち良さげに舞い上がり飛び去って行ってしまった。
「あいた、逃がしてしもた……」
肩を落として店に入りながら、与一はご婦人に「お騒がせしましたな。お見苦しいところをお見せして」と頭を下げた。
梅の木にとまっていた鶯が居なくなった掛軸は、なんとも寂しい間の抜けた絵になっていた。
「はあ……」
溜め息をつき掛軸を見つめる与一に、ご婦人が不思議そうな顔で言葉を漏らした。
「こちらの……鶯」
与一は、掛軸の梅の木を見つめて、ぺちっと毛のない頭を叩いた。
「気が向けば、またここへ戻ってくるでしょう」
掛軸の梅の木を見ながら、与一は呑気に笑って見せた。
「あ!」
ご婦人と与一は、共に声をあげ扉の外へと駆け出たが、鶯は気持ち良さげに舞い上がり飛び去って行ってしまった。
「あいた、逃がしてしもた……」
肩を落として店に入りながら、与一はご婦人に「お騒がせしましたな。お見苦しいところをお見せして」と頭を下げた。
梅の木にとまっていた鶯が居なくなった掛軸は、なんとも寂しい間の抜けた絵になっていた。
「はあ……」
溜め息をつき掛軸を見つめる与一に、ご婦人が不思議そうな顔で言葉を漏らした。
「こちらの……鶯」
与一は、掛軸の梅の木を見つめて、ぺちっと毛のない頭を叩いた。
「気が向けば、またここへ戻ってくるでしょう」
掛軸の梅の木を見ながら、与一は呑気に笑って見せた。