デイ ドリーム - 儚く甘いゆめ -
だから、嫌だったのに…





心の中でぽつりとつぶやいた言葉は、だれにも聞こえていない。





雨の所為でじめじめとした空気だけではない、室内に広がる陰鬱で重苦しい雰囲気。



その上、無機質で平坦な声でお経が読まれている。
ふと、ひよりの視界にぼんやりとした白い光が見えた。




光の方へちらりと視線を向けると














息が止まった。














黒い額縁の中でほほ笑む愛しい人。





色は無くモノクロではあったが、すぐに思い出すことが出来た。


彼の少し日に焼けた肌の色。
笑うと白い歯がのぞき、その中でも八重歯が印象的で犬のようで愛らしかった。
長い睫毛と細められた目の奥にある水晶のように綺麗な瞳。




だけど、もういない。
彼はここにはいない。
そして、もうかえってこない。
かえってこれない。












これまで抑え込んでいた感情がぐっとせり上がってくる。



胃の底がジリジリと焼けるように熱くなって、胸が圧迫されてしまったようにうまく息が出来なくなった。




どくどくとこわいくらいに心臓の音が全身を駆け巡って、ぐらぐらと世界がまわりはじめる。




ぐらりと倒れたひよりを支えたのは、先ほどひよりをここまで引っ張ってきた友人だった。






「だ、大丈夫？」





慌ててひよりを支えた彼女は、顔色を青くして尋ねてきた。





「……う、うん…」





ひよりは弱々しく返事をしてゆっくりと起き上がる。




その刹那、頭の中で封印していた記憶がぶわっとあふれ出したことがわかった。
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