奥様のお仕事
「よかったら 私のところで 働きませんか?」


「え?」


「氏も私のところなら安心すると思います」


そう言うと私に封筒を手渡した。


「黒木氏から頼まれたものです」

私は半信半疑で その封筒から手紙を取り出すと
そこには 祖父のくせのある字が 並んでいた。



『マリン この手紙を読んでいるということは 俺はもういないか?
悲しい思いをさせて悪かったな。おまえを一人置いて行くのが
不安で仕方がないが 俺も寿命があるから
そろそろ愛するおくさんにも会いたいし 親不孝者の娘にも
会って怒鳴りつけてやりたい。マリンを置いていくのが
心残りだけれど もうそろそろここから飛び出して
幸せを見つけて欲しい それが俺の一番の願いだ。
後のことは 信頼できる 長谷氏に任せていくから
マリンはとりあえず 彼を頼って歩き出してほしい。
責任を最後まで果たせず 申し訳ない。
海のように青い目をした美しい娘に育ってくれた………
マリンがいてくれて 残りの人生本当に楽しかった ありがとう』

私の方こそ
「じいちゃんがいてくれたから 寂しくなかったよ」

涙にくれる私に 手を差し伸べて その人は優しく微笑んだ。
< 11 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop