奥様のお仕事
「マリンさん」

浩一郎の母親に声をかけられた。


「もう着替えたのね」
冷たい目をしている。

「今日は大切なお客様がお見えになると聞きましたので」


「悪いのだけど大切なものを買い忘れてしまって
お手伝いさんたちは用意で忙しいし悪いけれど
あなた買ってきてくれない?」


大切な客人の大好物の羊羹だった。

街のデパートにしか店がないから
大急ぎで出かけてきてほしい。

そんなに困ったことなら協力するのもいいかも


「俺が乗せていくことになってるから」

伸二郎が後ろからやってきた。


「急いで これお金 」


母親は私に封筒を手渡した。


「浩一郎に言ってきます」



「いいわ 私から言っておくから
とにかくちょっと急いでちょうだいね」


人にものを頼むわりには 上から目線なのは
性格的なのか お家柄なのか


「ほら コート」

伸二郎がコートまで持ってきていたのに驚いた。


「シン頼むわね」


「は~い」


そう言うと母親はさっさといなくなってしまった。
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