奥様のお仕事
家電が鳴ったのはそれからしばらくしてからだった。

「もしもし……」
もう話す気力さえない

「マリン?」


「追い出されちゃった・・・・・
戻る気力なし・・・・・・」


「今から帰るね」

浩一郎の声がすごく小さな声だった。



真っ暗な部屋でスーツも脱ぎっぱなしで
私はキャミソール姿のままもう 立ち上がる気力すらない


浩一郎の声を聞いて安心してうとうととしてしまった。
目の前が明るくなって目を覚ました。


「大丈夫か マリン」


「大丈夫じゃない」


浩一郎が悪いわけじゃないだけどこの怒りの矛先を
どこに向けたらいいのかわからない。


「おつかいに出たと聞いていたけど
いつになっても戻って来ないからおかしいなと
思ったんだ・・・・・・」


「何か…ひどいよ……
こんなことされるなら 文句言われる方がいい」


「ごめん
一生懸命やってくれたのに」


「いいの 浩一郎が戻ってきてくれたから」


「風邪ひくぞ そんな恰好して」


「もう無理するのやめる
何か すごく 惨めだったもん・・・・・」


浩一郎に抱き上げられて ベットに寝かされた。


「お疲れ様 少し休んで」
そう言うと 部屋を出て行った。
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